映画って、何を重視するかによって評価が変わると思っていて。

先に評価的な話をしてしまうと、映画「ラ・ラ・ランド」に関しては、カメラワークや音楽、美術など、総合的な面で素晴らしい映画なんですね。アカデミー賞の受賞数から見ても、その辺は明らか。

だけどこの映画、個人的には「もっと別の部分」に注目すべきなんじゃないかな?と思うわけです。

映画の途中から、僕は「ラ・ラ・ランド」がデミアン・チャゼル監督の人生そのものを映し出したものにしか見られず、かつそれが見事としか言いようのない出来だったように感じました。

この記事は映画「ラ・ラ・ランド」のレビューですが、僕の中での「ラ・ラ・ランド」の評価は、作品そのものではなく監督そのものにちなんでいます。

今回もネタバレは気にしていないし、ていうか結論も書いてしまっているので、未見なら読まないでください。もし読んだとしても、それは僕の責任ではありません。了承の上、よろしくお願いします。

ラ・ラ・ランドとは

舞台は“夢を追い求める人”が集まる現代のロサンゼルス。いつか自分のジャズの店を開くことを夢見るジャズ・ピアニストのセバスチャンと、女優を志しオーディションを受け続けるミアが出会い、恋に落ち、夢を叶えるため奮闘していく。
Wikipedia「ラ・ラ・ランド」より

「ラ・ラ・ランド」は、ロサンゼルス(主にハリウッド)地域の愛称、または「陶酔し、ハイになる状態」のことを指すんだとか。

ジャズをメインにした、現代版のオリジナル・ミュージカル映画ということで、それだけで評価される挑戦的な映画になっています。

チャゼル視点のドリームカムトゥルーと挫折の話

la-la-land

こっからが本題。まずはチャゼル監督が今作を撮るまでの経緯から。

デミアン・チャゼル監督が「ラ・ラ・ランド」を撮るまで

チャゼル監督が今作を初めて撮影しようと考えたとき、資金繰り的に無理だということが判明しました。当時は映画を1作撮ったか撮ってないかの頃だったんじゃないかな?それくらいの頃です。

その時点では「どう頑張っても、誰も資金を出してくれない」ということだったので、チャゼル監督は

「だったら金を出す価値のある人間になるしかねーじゃん!」

ということで、映画「セッション」が生まれました。これは監督2作目に当たる作品です(「ラ・ラ・ランド」は3作目)。

結果は言わずもがな。「セッション」も名作だったし、これだけでもデミアン・チャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」への並々ならぬ思いを感じ取ることができます。

ジャズ要素が強い理由

チャゼル監督は、映画の世界に入る前、ジャズドラマーになろうとしていました。結局「自分にはそれだけの才能がない」と悟り、映画監督の道を選ぶのですが。

だからこそ、映画の題材としてジャズを選び続けたんだと思います。前作「セッション」も、ジャズドラマーの世界を描いてますし。

映画内でもライアン・ゴズリング演じるセブが言っていましたが、「(エマ・ストーン演じるミアの書いた舞台小説を読み)ミアの視点から見た世界を描いているから面白いんだよ」というのは、自身に言い聞かせているようにも見えます。

「ラ・ラ・ランド」は、チャゼル監督の視点から見た「ジャズと映画の融合」を描いた作品だったんじゃないかなと。

ミア=チャゼル監督

エマ・ストーン演じるミアは、チャゼル監督を投影した役割になっていたように見えました。

ミアは女優を夢見て田舎からLAに移住し、日々オーディションを受け続けています。何度も何度も受け続けるのですが、一向に受からない。

そして、セブに言われた一言で、自分で作った舞台に主演で出演するという行動に出るのです(結果として、それが心の折れるキッカケとなったのですが…)。

チャゼル監督も同じように、ジャズドラマーを夢見てスクールに通い、紆余曲折を経て諦めるに至ったのだと思います。

そして、「ラ・ラ・ランド」では、「その挫折がなかったら…?夢が叶っていたら…?」というifな話を作り上げ、夢の供養をしているようにも映りました(特にラストね…)。

セブ=ジャズの擬人化

セブは分かりやすいですよね。分かりやすく言うと、セブはジャズそのものを擬人化したようなものなんだろうなと。

ミアとセブが惹かれ合うのは、チャゼル監督とジャズとの蜜月を表現しているってことです。

で、既に言ったように、チャゼル監督はジャズドラマーの夢を諦めています。ということで、映画「ラ・ラ・ランド」でも、ミアとセブは最終的には結ばれません。

ジャズへのラブレターであり果たし状

ミアとセブが別々の道を進んでいくラストシーンでは、両者が笑顔で終わっています。

これは、

ミア(チャゼル監督)「ジャズの夢は破れたけど、映画監督としてジャズを盛り込みまくったミュージカル映画撮ったで(ドヤ、スゴイやろ)」

セブ(ジャズ)「やるやん。そういう付き合い方でジャズを広めてくれてありがとやで。」

ということなんじゃないかと。

夢破れつつも、別の形でジャズを描いたチャゼル監督に乾杯ってことなんじゃないかと。

観たら合わせて観たいミュージカル映画

僕はほとんどミュージカル映画を観てきてないのですが、「ラ・ラ・ランド」のパンフレットには結構な数の「おすすめミュージカル映画」が紹介されていました。

鑑賞後は、これらも時間を作って観ていこうかなーと思いますし、せっかくなので共有しようかなということで。

「ラ・ラ・ランド」では、特に「雨に唄えば」のオマージュが多いようです。これらを観てから改めて今作を観ると、評価もまた変わりそう。

おわりに

普通に映画としてのストーリーも素敵だったし、パワフルで元気をもらえるものだったと思うけど、個人的には「チャゼルかっけー!!!やってやったじゃん!!!」な映画でした。

自分の成功と挫折や、今のジャズへの閉塞感に対する皮肉も上手くまとめた快作でした。

「ラ・ラ・ランド」:85/100